- 2010/09/18 00:01
- Book
まず最初に、私個人、日常生活の中で、差別用語は使いませんが、作中に出てくるその言葉をそのまま使うかもしれませんが(極力、回避出来る点は回避しますが)、差別用語を助長しようとする意図はないので、そこはご理解頂きたいです。
あらすじ
主人公の蓑浦はまだ30歳にもならない青年であるが、髪は見事な白髪である。彼の体験したある恐ろしい出来事の、そのあまりの恐怖のために黒かった髪が一晩にして真っ白になってしまったのだ。彼の妻の体にはむごたらしい傷跡があり、また恋人と友人を立て続けに亡くした経験を持つが、それも同じ出来事に関連した結果であった。
過去のこと、蓑浦は同僚の初代と恋に落ち結婚を決意する。初代は3歳の時に実の親に捨てられ、育ての親に拾われ大事に育ててもらい、養父亡き今は養母と仲良く暮らしていた。初代が捨てられた時に持たされていた系譜図は肝心なところが破れていて、やはり身元はわからないのだが、初代はお守りがわりのように肌身離さず持ち歩いている。結婚指輪を贈る蓑浦に初代は「私はお返しできるような値打ちのあるものは何も持っていないから、命の次に大事なこれを」と系譜図を贈るのだった。
そんな折、初代に猛烈な求婚を申し込む相手が現れる。家柄も収入も学歴も蓑浦より格段に上のその男は諸戸といい、蓑浦の知り合いだった。蓑浦と諸戸は学生時代に知り合い、蓑浦は尊敬できる先輩といった風に諸戸を慕っていた。諸戸は快活で頭のよい美男子だが実は同性愛者であり、女性に興味がないどころか汚いものだとさえ感じ、またそんな自分を恐ろしくも思い、そして蓑浦に恋情を寄せていた。蓑浦はわずかにそれを悟っていた。酒の勢いで蓑浦に対する恋情を暴露してしまった後は気まずくなり会うことも少なくなったが、いまでも熱烈な手紙をよこす諸戸とつい最近出かけたこともあった。蓑浦に同性愛者の性癖はなかったが、立派な男性として尊敬できる相手である諸戸にそういった感情をむけられることで少しばかり自尊心がくすぐられる向きもあったのだ。蓑浦は諸戸が初代に求婚したのは、初代と自分の仲を引き裂くためではないかと疑う。
ある日自宅で初代が殺され、いつも系譜図を入れていた手提袋などが盗まれる。自宅の鍵はすべてかけられており侵入の痕跡は見当たらない。蓑浦は諸戸を疑わずにはおれず、ひそかに初代の復讐を誓って探偵業を営む友人をたずねるが、彼もまた犯行など不可能と思われるような混雑した海水浴場で白昼堂々殺されてしまう。現場検証を見守る群衆の中に諸戸の姿を発見した蓑浦はいよいよ諸戸に対する疑いを深くするが、その後はこの頃考えていたよりももっと複雑な、おぞましく不幸に呪われた、残酷な「鬼」の所業ともいえる恐ろしい出来事に巻き込まれてゆく…。
感想
大学生の頃、大学の図書館で以来の再読です。
どこまでも一途な同性愛、差別を受けた男が健常者を呪う心、監禁される・または殺人の道具に使われる異形の人達、地獄のような洞窟探検、など、小説全編をどす黒い疾風が覆っています。
前半こそ、ミステリー小説の形をしているのですが、少しずつ少しずつ、その事件に、異形の存在が関わっている事が見え始め、主人公に恋い焦がれていた男性・諸戸が自分の出生について語り出すところで、いよいよその黒幕の姿がはっきりを見えてくる。
「自分の父親は障がいを抱えている、その父がこの残忍な事件の黒幕である」この答えが果たして、正しい答えなのか?主人公と諸戸は、諸戸の生まれ故郷を目指すわけですが、そこで待ち構える諸戸の父は、凄まじいまでの健常者への憎悪を持った男です。
実は血が繋がっちゃいませんが、息子を監禁し、息子の友も始末しようとする。後々、立場が逆転した後も、再度、仕掛けてくる。汗。結局は、島に隠れた秘宝を見つけた瞬間、彼の憎悪の心は壊れてしまうわけですが…その狂乱してしまった姿も凄まじい。
一方で、諸戸君の一途過ぎる同性愛も、凄まじい。時には大胆に、時には隠し、相手が自分になびかないのは百も承知の上、それでも押さえきれない恋心…彼は後日談で、早々に亡くなっていたという事になりますが、あれだけの状況に接し、それにこの燃え続ける恋心があるわけですから、確かに、もう燃え尽きる寸前だったのかもしれません。
最後の最後まで、最後の一文まで、彼はその恋心を捨てなかった。ある意味、格好良いですよ。ただ、BL誌とか好きな腐女子な方が読んだら、どうだろう?さすがに、気持ち悪い感情を持つかもしれない。
に対し、主人公は…
恋人を殺された復讐心で動いていたはずが、結合双生児・秀ちゃん吉ちゃんの秀ちゃんに恋をしてしまう。腰の部分だけ接合しているこの二人は、秀ちゃん=女性、吉ちゃん=男性なもんで、吉ちゃんが普段から一方通行の恋心ゆえに、主人公と秀ちゃんの恋路を邪魔しようとしたりしますが、、それで一悶着ありますが、
監禁されている中で、字が何とか書けるようになった秀ちゃんがこれまでの自分の人生について、書いている日記には、何とも言えない気持ちがありますが(特に、健常者を片輪者だと言っている→実はその事が逆で、自分達こそそう呼ばれてしまう存在だと気付いた瞬間など)、主人公達の前に現れて以降は、どこか可愛いところもある二人なんですよね。
私の大好きな漫画で、「木島日記」という漫画があるのですが、こちらの漫画にも、冒頭、月と呼ばれる変わった少女が出てきまして、彼女は全身に手術跡があり、言葉もろくに話せない子なんですが、この子もどこか可愛いところがある。しかし、彼女は、自分の無くしていた記憶を思い出し、自殺→木島が蘇らせようとするが、既に一度、それを施されている事が判明→彼女の身体は膨れ上がり、そして弾け、木島の顔にべっとりと肉片が付く→そして、彼は仮面を被るようになります。
「孤島の鬼」の場合は、障がいを持った人達に関しては、黒幕などを除いて、作られた存在でありあり、上記の秀ちゃん吉ちゃんは、性別が違う結合双生児がいるのか?結局は、諸戸父によって、意図的に作られた人。その点では、正直、彼に嫌悪感を持ってしまった。彼の事情に、関係ない人を巻き込んでまでの復讐心。それが彼を突き動かすモノ。
久々に、最初から最後まで、ノンストップで読み進めました。グイグイと引き込まれました。
でも、どうなんでしょうね?
孤島の鬼 – Wikipedia
『光文社文庫・江戸川乱歩全集』は、今日の観点から見て、問題視される表現・用語を修正しており、その点は、「孤島の鬼」だけに限らない。『光文社文庫・江戸川乱歩全集』江戸川乱歩作品は、時代の相違上、現代では問題とされる表現を修正して出版しているシリーズである。
これに対し、創元推理文庫(創元社)に収録された本作品は、光文社文庫版では修正された表現も原文のまま掲載されている(巻末の編集部後記には、この点について、あえて原文通りにした旨が述べられている)。創元推理文庫(創元社)では、本作品が雑誌「朝日」に連載されていた際の全ての挿絵・扉絵・見出し(竹中英太郎作)が合わせて収録されている。
Wikipediaを見ますと、このように書かれています。私が読んだのは、創元推理文庫なので、そのままの言葉で書かれていましたが、いずれ、長い月日の末には、全て修正されてしまうのかな?と思うと、差別的表現はしない方が良いに決まってし、私自身しませんが、
難しいなあ、ここを何と表現すれば、良いのだろう。うーむ
俺は、原文のままであってほしいと思うところがあります。と言ってしまうのは、果たして良い事なのか?悪い事なのか?難しい…
PS.
今回読書中に聴いていた音楽は、
YouTube – seefeel – fracture
Seefeelで「Succour」
YouTube – Stars of the Lid – Dust Breeding (1.316)+
Stars of the Lidで「Avec Laudenum」
YouTube – Soft Machine – Facelift (1/2)
Soft Machineで「Third」
YouTube – Isis – Holy tears
ISISで「IN THE ABSENCE OF TRUTH」
の計4枚です。
筋肉少女帯 孤島の鬼 3種‐ニコニコ動画(9)
そして、読み終わった後に、こちらも改めて聴いてみた。
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